A gentle guide to Tensor 2

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テンソルの教科書をひもとくと,いきなり添え字が上についたり下についたりしていて面食らうことだろう.添え字の上げ下ろしは,正規直行座標系では全く無用の長物である.そこで第1回では敢えて添え字の上下を無視した.

添え字の上げ下ろしは,内積と極めて深い関係がある.

正規直交座標系では,ベクトルxとベクトルyの内積は,その成分ごとの積の和(自然内積とも言う)に等しい(これはピタゴラスの定理である).つまり,ベクトルxとベクトルyの内積をsとすると

である.ここにアインシュタインの規約によって総和記号を省略している.

ここで,非正規直交座標系へ内積の定義を拡張するためにちょっとした工夫をこらす.つまり,内積sを

または
とする(どちらでも同じことになる).もちろん正規直交座標系では
かつ
である.

これから,斜交座標系を考える.斜交座標系は1軸と2軸が直交しない座標系だ.その斜交座標系でも内積は計算したい.然るに,座標系を正規直交系から斜交系に取り替えるとベクトルの成分は変わってしまう.

ああ,言わんこっちゃない.だからあれほど成分で書かずにベクトルはベクトルとして...という意見はいったん置いておいて,こう考えよう.正規直交座標系だろうと斜交座標系だろうと,ベクトルxとベクトルyの内積sは

であるとする.トリックは添え字の上げ下ろしにある.つまり,正規直交座標系と違って斜交座標系では
なのである.ではどう違うのかというと,うまく調整してxi・yiが内積になるようにするのである.

それには,うまい方法がある.正規直交座標系から斜交座標系への変換は線形変換なので,

のように適当なテンソルgを使って線形変換を使うのである.逆の操作は
とする.このgijやgijは「計量テンソル」と言う.

呼称はどうでもいいものだが,xiのような下付添え字成分をベクトルxの共変 (covariant) 成分,xiのような上付添え字成分をベクトルの反変 (contravariant) 成分と呼ぶ.

と言っても,テンソルの添え字の上げ下ろしはなかなか取っつきにくいものである.テンソル添え字の上げ下ろしを幾何学的に説明した最も古い文献(にして最も美しい解説)は,パウリのもののように思う.

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