A gentle guide to Tensor 5

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ニュートンの運動方程式をF=maと書いたのでは本質を見失う.運動方程式は力が運動量の時間変化の起源であると読む.運動量をpとするかmvとするかは悩ましい問題であるが,解析力学,量子力学以外ではmvのほうが見通しがよい.そこで,運動方程式を次のように書こう.

ここにドットは時間微分を表す(ニュートンの記法である).念のため速度vは
である.

ニュートンの運動法則はガリレイ相対性を要求する.つまり,等速度運動系から見ても運動方程式はその姿を変えない.ある座標系Σから見て運動方程式が成り立っている限り,座標系Σから見て一定速度v0で動いている座標系Σ'でも運動方程式は成り立つ.これは数学的には,

なる変換(ガリレイ変換)に対して,方程式が形を変えないことを意味する.実際,上述の運動方程式の右辺はxの時刻tに関する2階微分であるため,上の変換に対して不変であることはたちどころに理解できる.(この式をもって時刻tをニュートンは絶対時間と呼んだ.そこまではいいのだが,カントはどうもこの式の意味をきちんと理解せずに利用して自説を唱えたのではないかと僕は疑っている.)

ガリレイ変換は変換行列TGを次のように定義して

次のように
とも書ける.行列TGが美しくないなーと思った人は,かなりいいセンスを持っている(と思う).

さて,これまで単位の話をしなかったが,これからは単位に気をつけることにする.つまり,長さの単位として「光秒」を採用する(もっと直接的に長さの単位を「秒」にしてもよい).これは光が1秒間に進む距離である.従って,光の速度は1である.今後,長さと時間は同じように秒で計るため,わざわざ光速度(c)を方程式には書かない.

マクスウェル方程式は,ガリレイ変換に対して不変ではない.すなわち,ガリレイ相対性は破れている.ローレンツはマクスウェル方程式が従う変換(ローレンツ変換)を発見した.それは次のような変換である.

この変換に対して不変な物理法則は,(ローレンツ相対性ではなく)特殊相対性を持つと言われる.速度v0が十分小さい場合,ローレンツ変換はほぼガリレイ変換と同じである. ローレンツ変換をテンソル形式で表してみよう.ポアンカレに倣って
とする.(一方ミンコフスキーはx0=tとした.)ローレンツ変換は次のように書ける.
ここに
である.あるいは,
かつ
である.見ての通り,速度v0の勾配(角度で言えばφ)による回転がローレンツ変換の本質である. ローレンツ変換を行列TLで表すと,
を使って
となる.行列TLは見慣れた回転行列であり,その対称性は美しい(TGと見比べてみよ). ローレンツ変換は回転であるため,内積は保存される.実際
なるs2は保存量(スカラー)である.
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