A note on Electromagnetic theory 8: ポテンシァル

マクスウェル方程式のシリーズでは,発散(ダイバージェンス)と回転(ローテーション)のイメージを見てきた.

実際のところ,発散も回転も数学的にはさほど重要な概念ではない.どちらも外微分の特別な場合に過ぎない.まあしかしそれは後知恵というもので,微分形式をつかってまでマクスウェル方程式を「綺麗に」書き直す必然性はさほどないかもしれない.ただし,次のように4次元形式で書いておくことは意味のあることである.

まず,以下のポテンシャルを導入する.


なるベクトルポテンシャルAと

なるスカラーポテンシャルφである,なぜこんなものを導入するのだろうか.

スカラーポテンシャルφのほうは(第2項を考えなければ)解釈が簡単である.ポテンシャルφは,その勾配が電場Eになるような量である.つまり,ポテンシャルφは電位のことである.ポテンシャルφの第2項は,後々の整合性のために加えられているのである.(詳しい事情はファインマン物理学 (3)を参照.)なお ∀X, rot grad X = 0 という恒等式から,磁束密度が静的な場合はただちに rot E = 0 が自明に導ける.

ベクトルポテンシャルAのほうは解釈が難しい.ひとつは ∀X, div rot X = 0 という恒等式から,ただちに div B = 0 が自明に導ける.しかし,これは本質的なことではない.

本質は,この二つのポテンシャルからひとつの4元ポテンシャル A = (φ, A) を作ることである.4元電流密度 j = (ρ, j) を使うと,マクスウェル方程式は


と書ける.ここに△はラプラシアンであるが,物理学者は4元ラプラシアンに限ってダランベルシアンと呼ぶ(記号も△のかわりに□を使うことがある).
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