Another introduction to programming language C 0D: 構造体

構造体は，既存の型を組み合わせて新しい型を作るC言語の能力である．例えば2次元のベクトルをいつも

double p[2] = { 1.0, 2.0 };

として扱うのは好ましくない．一方，

struct point {
  double x, y;
};
struct point p = { 1.0, 2.0 };


とすることは好ましい．なぜならば，構造体はほかの型と同じように，コピーを取ったり，アドレスを調べたり，サイズを調べたりすることが出来るからである．上述のようにpが定義されていれば，

struct point q = p;


のようにpの内容をそっくりそのままqへコピーすることが出来る．構造体の中身へは次のようにピリオドを使ってアクセスする．

printf("(%f, %f)\n", p.x, p.y);


構造体はsizeofでサイズを調べられるので，callocで配列を確保することも出来る．

struct point *pa = calloc(100, sizeof(struct point));


これでpoint構造体100個からなる配列が確保できる．または，自動変数として

struct point pa[100];


という確保の仕方もある．

構造体は，自分自身を除けば，任意の型を構成要素にすることが出来る．よく使われる構造体には，配列とそのサイズをまとめたものがある．例えば次の通り．

struct double_array {
  int size_of_array;
  double *array;
};


（標準Cの仕様の虚を突いて，可変長構造体というものを使うプログラマがいる．可変長構造体はC++で正式に禁止された．）

構造体はコピーできるので，関数の引数にも戻り値にも使える．いちいちstructと書くのは面倒なのでtypedefを使おう．

#include <math.h>
typedef struct point POINT;
POINT rotate_point(POINT p, double theta) {
  POINT ret;
  ret.x = cos(theta) * p.x - sin(theta) * p.y;
  ret.y = sin(theta) * p.x + cos(theta) *p.y;
  return ret;
}

構造体が大きくなってくると，ベテランプログラマから，こんな書き方をするといちいちコピーが発生して効率が悪いと言われる．これは真実であるが，ポインタ渡し（参照渡し）にして効率を稼いでも，プログラムの可読性は全く上がらない（むしろ下がる）ので，初心者の間はわざと構造体のまま（参照にせず）受け渡しをするのがよい．この問題（関数をまたぐ構造体のやりとりに関する効率と可読性の問題）の本質的な解決にはC++0xが必要である．

構造体をいきなりprintfで出力したり，sscanfで文字列から復元したりすることは出来ない．構造体をファイルに出力したいときは，各要素ごとに出力する必要がある．構造体を出力する関数を書いておくと便利である．例えば次の通り．

void print_point(POINT p) {
  printf("(%f, %f)", p.x, p.y);
}

自己参照構造体とは，自分自身へのポインタを含む構造体のことである．残念ながら，C言語は再帰関数をSchemeほどうまく扱えないため，自己参照構造体は宝の持ち腐れになる可能性が高い．教科書的な知識として知っておくことはよいことだが，実際に使う場面はかなり少ない．詳しくはK&R2を参照．
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